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IMFのレポートとか規制とかいろいろ。

約二年ぶりのブログ更新

IMFからcrypto asset時代のマネタリーポリシーについてのレポートが出てた。後半に概要を書いた。適当に訳したので何か間違いがあるかも。

crypto asset時代の到来において、中央銀行が存在意義を維持するために何をせねばならないかが書かれている。全体的にcrypto assetを中央銀行の強力なライバルと考えて、分析していて、変なcrypto assetへの攻撃が全く無く、非常に知性を感じる。

ある意味、こういう考え方を中央銀行がすれば、ある程度、暗号通貨にも既に存在意義があったということになる。ただ独占企業なので、コンペチタが無くなれば元の状態に戻ると思うので、共存していけるかどうかが暗号通貨の今後の重要な課題。規制について色々議論があるけど、これぐらい知的な議論をしてほしい。

暗号通貨の本質は、、中央の権限を極端にしぼり、中央を市場原理の競争にさらすガバナンス構造の変化。それによってもたらされるのは、censorship registanceや(中央がビッグデータに使えないことも含む)、中央の独占的な立場からくる社会的無駄を省くことなど。censorship registanceの対象に国も含めれば、国家を超えた通貨ができるし、必要以上の権力の暴走の抑止力にもなる。 一方で、先進国で生活しているということは、警察の力で守られていることであって、AMLを無視することは単なるズルでしかない。 クールに本質的なトレードオフを議論して、よりよい社会を創るにはどのような法律を創るべきかの議論が行われるのと良いけど。

また、暗号通貨はとんでもなく大きな社会構造を変化させるイノベーションであり、その周辺には、これまでに起きたこともないぐらいの大きな産業が発生するだろう。 リソースが有り余っている世界に生きている訳ではないので、そこはビジネス競争の面が大きくなってくる。多分、国際競争力ランキングが大幅に入れ替わるぐらいのインパクトがあるんじゃないかと思ってる。

個人的には日本は暗号通貨関係なく、緩和策を続けられなくなるまでに新しい産業作れなかったら相当厳しいと思っていて、暗号通貨は最後の蜘蛛の糸なんじゃないかと思ってる(これは個人の感性なので反論はいっぱいあるかも)。いずれにしろ不況が起きれば、多数が亡くなるし、国民の大半は人生において辛い選択をせざるを得なくなる。一攫千金を狙った人達の500億が無くなった程度の話ではない。

規制は相対的な面もあり、緩い方に向かってマネーと人と産業が流れる。IMFのペーパーには、緩い規制へのレギュレーションアービトラージをさせないようにするのが一つの策だと書いてあるけど、必要以上に相対的に厳しい規制をすれば逆効果なのは分かりきってる。

ニューヨーク州はメディアの集まるconsensusの時に合わせて、暗号通貨の本質である個人のプライバシーを最大にするようなZCashの取扱を公的ライセンスな取引所に開始させた。これなんて完全に産業界へのメッセージだなって感じ。 (まあアメリカはもっと偉い所があとから厳しいこと言ってひっくり返せるので楽に言えるんじゃないかって思ってるけど)

いずれにしろ最終的に暗号通貨に対する規制がどこに落ち着くか分からないけど、今のところ、暗号通貨の本質を理解し、その時代に備えるってのが海外の先進国の態度なんじゃないかなと思う。

暗号通貨けしからん みたいな短絡的な話じゃなくて、暗号通貨の本質を傷つけないAMLとはとか、Fiatと暗号通貨を共存させたより強い経済みたいな話がさすがにこれから出てくることに期待。

http://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2018/06/central-bank-monetary-policy-and-cryptocurrencies/he.pdf

以下、概要の翻訳。


cryptoassetはいつかpaymentの代替手段となるかもしれない。それは中央銀行のお金であるfiatの需要を減らすであろう。マネタリーポリシーは中央銀行のお金の無い世界でも有効性を持つのか考えるタイミングだ。

Crypto assetはボラティリティが非常に高く、またfiatほど信頼性が高くない: 悪名高い詐欺や、セキュリティの問題、運用上の問題、不法行為との関係。

しかし継続的なイノベーションがこれらの欠点を解決していくかもしれない。Crypto assetの本質的なコンペティティブなプレッシャに対処するために中央銀行は有効なマネタリーポリシーを研究し続けるべきである。Crypto assetの性質やその裏側にあるテクノロジから学ぶこともできるし、デジタル時代にもっと魅力的なfiat通貨を創ることもできる。

Crypto assetsは他の通貨との交換によってマーケットバリューを持っており、paymentやstore of valueに使用される。マネたリーポリシーやリーガルテンダーとして価値をアンカーされているfiat通貨と異なり、crypto-assetの価値は他人も価値を認めて使用するという期待に基いたものであり、それゆえボラティリティーが高い。

ビットコインのようなcrypto-assetは供給が限られているため、インフレリスクが限定されている。しかし、通常安定したマネタリーシステムに期待される3つの機能が欠けている。構造的デフレリスクへの対策、一時的なお金に対する需要ショックに対するフレキシブルな対応、最後の貸し手としてのキャパシティ。

しかし、AI等を用いたもっと良い発行ルールを用いればバリュエーションはステーブルになる。そのようなものは既に登場しており、あるものは既存のfiatにペッグしており、あるものはインフレまたは価格ターゲッティングポリシーを模擬した発行ルールをためしている(アルゴリズミックな中央銀行)。

交換の媒介としてのcrypto-assetにはアドバンテージがある。匿名性の高いキャッシュであり、長距離のトランザクションを可能にし、分割可能である。この性質によりcrypto assetは特に新しいシェアリングやサービスベースのデジタルエコノミーのマイクロペイメントにとって魅力的である。

そして銀行トランスファーと異なり、crypto-assetのトランザクションは中間者無しに即座にセトルする。このアドバンテージは特にクロスボーダー取引において明白である。

つまり、いくつかのcrypto-assetが次第にもっと広範囲で使用され、ある分野のお金としての機能を満たしたり、プライベートなe-commerceのネットワーク、使われる可能性を排除できない。

Crypto assetの登場は、中間者がいるアカウントベースのペイメントから中間者やカウンターパーティの信頼の必要がない、バリューベースorトークンベースのペイメントに変化することを示している。

そのようなシフトはデジタル時代のお金の造られ方の変化の前兆である:信頼に基づくお金からコモディティのお金へ。ルネッサンス時代へ一周回って戻るだろう!

20世紀には、お金は信頼に基いていた:中央銀行マネーは中央銀行と市民の信頼や中央銀行コマーシャルバンクの信頼、コマーシャルバンクマネーは銀行と顧客の信頼である。それとは対照的にcrypto-assetは全く信頼に基づかず、かつ、なんらかのエンティティへの信頼もなく、コモディティマネーのようなものである。 もし、crypto assetがデジタル時代にコモディティマネーとして主要な役割を果たすならば、中央銀行マネーに対する需要は減っていくだろう。

このシフトがどのようにマネタリーポリシーに影響するだろう?中央銀行は通常、銀行間マーケットのリザーブの短期利子率を設定することによってマネタリーポリシーを実現している。そのようなリザーブサプライヤーとしての独占が弱まった時、中央銀行のマネタリーポリシーの能力は実際に奪われるだろう。

中央銀行が決定できる利子率は一般的な経済トランザクションに影響するアセット価格に殆ど関係しなくなるだろう。言い換えれば、中央銀行のお金は大半の経済活動を定義しなくなり、マネたリーポリシーは無関係になるだろう。途上国のドル化のアナロジーでみることができる。

中央銀行はどのように対応するべきか?最初にfiat通貨をより良いものにする努力を続けるべきである。 IMFマネージングディレクタのChristine Lagardeは昨年のスピーチで以下のように述べた。”中央銀行の最も良い対応は、今後も有効なマネたリーポリシーを実行し続けけ、かつ新しいアイデアと新しい需要にオープンな態度を取ることです” マネタリーポリシーコミッティーメンバーは安定した単位をオファーし続けるべきです。

マネタリーポリシーメイキングはテクノロジから力を得ることができる:中央銀行ビッグデータ人工知能、マシンラーニングの利用により経済見通しを改善することができる。 二番目に、行政はcrypto assetを規制のアービトラージに使用されることを防ぐように規制するべきである。これは、マネーロンダリングやテロリストへのファイナンスを防ぎ、消費者保護を強め、cryptoのトランザクションからの税収を効率化する。 三番目に、中央銀行は自身のお金をセトルメントに使われるように魅力的にし続けるべきである。中央銀行マネーをユーザーフレンドリーな形でデジタルワールドで魅力的にすることができる。例えば、自身の物理的なキャッシュや銀行リザーブの補助的なものとして自身のデジタルトークンを発行する等。そのような中央銀行デジタル通貨はcrypto assetと同様にP2Pで交換することができるだろう。

中央銀行デジタル通貨は強いネットワーク外部性がプライベートのぺいめんとネットワークに与える強い独占力への対抗策として役に立つだろう。 バンキングサービスのコストが重い個人やスモールビジネスのトランザクションコストを減らすことに役立つだろう。キャッシュと異なり、デジタル通貨は分割に制限が無い。

マネタリーポリシーの観点からは、interest-carryingな中央銀行デジタル通貨は、リザーブへの需要が消えた時に残りの経済圏へinterest rateポリシーを伝えるのに役に立つだろう(???))

そのような通貨の使用は、中央銀行が通貨発行から収入を得続けることに役立つだろう。新興マーケットに取って、シニョリッジは主要な収入源であり、独立性にとって重要なセーフガードである。

中央銀行通貨の設計において、トレードオフがあり慎重な考察が求められる。利点とリスクは、国ごとに異なる。

デジタル時代に中央銀行には挑戦と機会が存在する。中央銀行はfiat通貨に対する公的な信頼を維持し、デジタル、シェアリング、Decentralized service economyにおいてゲームに参加し続けねばならない。Crypto assetよりも安定的な単位をオファーしたり、中央銀行マネーをデジタルエコノミーにおいても魅力的な価値の媒介にすることによって適切な対応が可能であろう。